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REPORT レポート・調査
2021年7月9日

【連載】繊維・ファッション業界の指針となるSDGs -「リサイクル」から「リペア」への転換-(2020年4月執筆記事)

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※2020年4月20日付の繊研新聞の記事を一部変更して掲載しています
近年世界的に認識が高まり、日本でも取り組む企業が増えている「SDGs(持続可能な開発目標)」。国際的な目標は、日本企業に課せられた「責任」であると当時に新たな「機会」と捉えることもできます。SDGsが繊維・ファッション業界にもたらす影響やビジネスチャンスについて解説します。
SDGs(持続可能な開発目標)の環境関連の目標の一つ、目標12「つくる責任・つかう責任」は、企業と消費者が参画すべきものです。 気候変動などの環境問題を引き起こすような生産消費行動は、見直すべき時期にあり、アパレル業界も例外ではありません。 過去15年間で消費者が購入する衣類は約6割増加した一方、半分以上が購入1年以内に廃棄されています。 「持続可能なファッションのための国連アライアンス」が設立されるなど、「大量生産・大量消費」の事業活動は見直されつつあります。
日本では「3R」、すなわち「リデュース」「リユース」「リサイクル」が推進されています。特に「リサイクル」が重視されており例えばプラスチックでは「マテリアルリサイクル」(プラスチック製品に再利用)、「ケミカルリサイクル」(化学分解し化学製品に再利用)、「サーマルリサイクル」(焼却し熱エネルギーとして再利用)が行われています。このうち資源を循環利用できるといわれる方法はマテリアルとケミカルリサイクルですが、日本ではこの割合は約3割にとどまります。大量生産・大量消費のビジネスに対しリサイクルだけでは対応に限界があります。
持続可能な生産と消費の在り方として、欧米では、「3R」に「リフューズ」(必要のないものを断る)、「リパーパス」(別の目的の製品に再製造)、「リペア」(修理)を加えた「6R」が推進されています。 製品の処分が前提の「リサイクル」だけでなく、製品を長く使う「リペア」にも着目したルールが作られていることに注目が必要です。 例えば、欧州委員会の「エコデザイン作業計画」では、耐久性、リサイクル容易性などにかかる製品別と分野共通の規格策定が進んでおり、製品の修復容易性も重視されています。
「リペア」は市場としても拡大しています。
リペアを含む衣服のリセール市場は、米国では2018年の50億ドルから23年には230億ドルに成長する見通しです。 米スタートアップ企業のリニューアル・ワークショップは、ブランドと提携し、正規品として販売できない製品や古着をリペアし、オンライン販売する事業を行っています。 廃棄対象の製品を高い水準で修復して販売するという新しいビジネスモデルと、環境面での貢献が評価され、多数の投資会社から資金を調達しています。 19年には欧州にも進出しました。 米アパレル企業のパタゴニアは、13年から「WornWear」という、愛用のウェアを修理して長く使う考えを広める取り組みを行っています。
日本のアパレル業界でも、「リサイクル」だけでなく、製品を長く使うための「リペア」が今後一層普及することが期待されます。 大量生産・大量消費される画一的な製品ではなく、長く着たいと思われるようなアパレル製品への転換が始まるはずです。

繊研新聞(2020年4月20日付)

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プリンシパル
大久保 明日奈
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